新生K-1が10月14日に両国で大会を開催するようだ。今年は日本での開催はないと言っていたのに何だか急転直下だな。
出場するメインのファイターは、5・27スペイン大会に同じくバダ・ハリとミルコ・クロコップ。そして今年1月にヘスディ・カラケスにリベンジを果たしたダニエル・ギタもエントリーされている。
2012年、経営陣が変わり新たな船出となった新生K-1であるが、これから再生を図っていくにあたって、簡単に今までを振り返ってみよう。
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正道会館本部道場 |
K-1は元々、空手の正道会館館長、石井和義氏がプロモーターとして発足させた。K-1とは、キックボクシングや空手、テコンドー、ムエタイ、そういった立ち技格闘技のトップファイターが集まって立ち技最強を決める格闘技イベントだ。1993年には、初めてワールドグランプリが開催された。初代王者はブランコ・シカティック。
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これぞK-1!K-1四天王の4人。 |
当初は元極真空手出身で世界大会2位の実績のあったアンディ・フグや、キックボクサー最強とうたわれていたピーター・アーツらが参戦。無名だったアーネスト・ホーストやマイク・ベルナルドなどもK-1に参戦したことで一気に名を馳せた。フグ、アーツ、ホースト、ベルナルドの4人はK-1四天王と呼ばれ、その後もジェロム・レ・バンナやレイ・セフォー、ミルコ・クロコップなど人気ファイターが続々誕生した。そしてK-1は人気絶頂となった。
しかし、新しい格闘技の分野である総合格闘技の台頭、プロレス界への進出、マイク・タイソンとの関係など、次第に軸がぶれ始めてきた。その象徴が2002年に登場したボブ・サップだ。
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もっと真面目に頑張っていたらね。 すごく魅力的な人だと思う。 |
ボブ・サップはK-1と総合格闘技のPRIDEに並行して出場。PRIDEでは初代PRIDEヘビー級王者アントニオ・ホドリゴ・ノゲイラをあわやのところまで追い詰め、同年10月のK-1GP開幕戦ではK-1 3タイムスチャンピオン、アーネスト・ホーストにまさかのTKO勝利。リベンジ戦となった同年12月のFINALでもまさかまさかのサップの返り討ちとなりホースト2連敗。格闘技ファンの間だけでなく一般層にもボブ・サップ旋風が巻き起こった。
ボブ・サップvsアーネスト・ホーストは確かにおもしろかった。真の格闘技を語るなら、あの試合はショー的要素が強かったかもしれないが、あれほど盛り上がった試合は他にはないだろう。しかしこの試合がその後のK-1を変えてしまう基点となったように思う。
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大きな話題となったボブ・サップvs曙。 しかし紅白を超えても意味はないのだ。 |
2002年12月27日、石井館長が法人税法違反の容疑で在宅起訴。翌2003年2月3日に同容疑で逮捕された。2003年以降、石井館長は表舞台から姿を消し、代わりに谷川貞治氏がK-1のプロデューサーとなった。
新しくK-1プロデューサーに就任した谷川氏は、大人気のボブ・サップを軸に、相撲から格闘家に転向した曙、タレントのボビー・オロゴンなど、格闘家としてはプロではないファイターを数多く使い大衆向けの格闘技を作り出した。格闘技はお茶の間化してしまったのだ。フジテレビ、TBS、日本テレビでのレギュラー大会放送、そしてTBS大晦日の大イベントDynamite!!。テレビ中継が豊富なのは良かったが、次第に格闘技ファンの心は離れてしまっていた。テレビ的なおもしろさを求めて格闘技を見る人は飽きが来ればすぐに観なくなる。K-1は次第に苦境に立たされていった。
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2010王者アリスター・オーフレーム 先だって米で行われた新生K-1 トライアウトでは審査員を務めた |
2007年のグランプリファイナルから、ずっと続いていた東京ドームでの開催がなくなった。この頃、ちょっと危ないのかなと感じた。結果的に、アリスター・オーフレイムがチャンピオンになった2010年大会を最後に18年続いたK-1グランプリの開催が途絶えた。経営難が原因だった。そして2011年、テレビでK-1が観れなくなった。
と、これが1993年から2010年までのK-1の流れだ。2012年に経営権が海外に渡り、新生K-1がスタートした。今年の5月27日には、バダ・ハリやミルコ・クロコップらが参戦してスペイン大会が行われた。10月14日に日本で行われる大会にもバダ・ハリとミルコが参戦という話だ。2人ともビッグネームには間違いないのだが、バダ・ハリはボクシングに転向して一旦はK-1を離れた選手だ。ミルコは先だってUFCで引退を発表したばかり。この2人だけで今後の軸を回していくのは難しいのではないか。
しかしそれもそのはず。K-1が経営難により開催を休止している間に、別の立ち技格闘技団体(グローリー、IT'S SHOWTIME。ともにオランダ。)にK-1ファイターが多数移籍してしまったのだ。しかしファイトマネー未払い問題が真実であるならば致し方ないところだ。※ファイトマネーは和製英語。正確にはpurse(パース)。
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K-1は必ず復活する! |
といったところで、現時点ではバダ・ハリとミルコ・クロコップを軸に展開していく形になっていると思われる。もちろん、2人とも強烈に観たいファイターであることには変わりない。バダ・ハリはまだ若く最もGPチャンピオンに近い存在だ。ミルコはかなりのベテランではあるが、K-1で再び彼の姿を見れるのは奇跡に近い。ひょっとしたら、ミルコがGPチャンピオンになる可能性だってある。なかなか以前のようにK-1だけが格闘技界の筆頭になることは難しいが、バダ・ハリとミルコが軸となる新生K-1は必ずおもしろくなるはずだ。
今年の12月には、現在では世界最大の立ち技格闘技団体と目されるグローリーが日本で大会を開催する。それはK-1にとって脅威かもしれない。しかし、自分はK-1が再び世界最大の立ち技格闘技団体に返り咲くと思う。なぜなら、K-1とグローリーは根本的に違うからだ。
グローリーは単純にキックボクシングのイベントだ。対してK-1はキックだけでなく空手や他のジャンルの立ち技格闘技をミックスさせた言わば立ち技の総合格闘技だ。だから面白いのだ。そして、K-1の魅力は武道精神にある。やはり、アマチュアの空手を元に発足した格闘技イベントだから、ただのプロ格闘技イベントにはない、なにか目に見えない大きな魅力があるのだ。
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必要なのは純粋な格闘技スピリット |
しかしそれは石井館長時代の話。新しい経営陣が普通のキックボクシングイベントにしてしまえば、グローリーとなんら変わらない。そうなれば、大企業のようにどっちが資金力が強いかが焦点になってしまうだろう。すべては新しいK-1の経営陣と新しくK-1プロデューサーに就任した魔裟斗に委ねられている。
K-1に変わる格闘技イベントは世界中どこを探してもない。もう一度、K-1四天王時代のように、格闘技にまっすぐなK-1を生み出して欲しい。テレビの視聴率目当ての格闘技イベントはもういらない。みんな本物が観たいんだ。とにかもかくにも、10・14の両国大会、楽しみだ。これからもK-1を応援し続けるぞ!